研究計画書
2014年の首都大学東京BS受験時(不合格)

研究課題

「スクラムによるチームメンバーのリーダーシップ行動への影響」

研究の背景

昨今の事業環境は、日に日に複雑で変化の激しいものになっている。Webサービス業界もまた、その例に漏れない。その上、プロダクトに求められる要求は、激しい競争環境の中で高まり続けている。そうした状況下において、変化に対応しつつより高い価値を提供するには、垂直分化による指示系統よりも、個々人がリーダーシップを発揮する自由度の高いチームが望ましい。

1によれば、Webサービス企業において中心的な役割を果たすべき技術職は、他職種と比較して能力向上に関する実感を持ちにくい。そのことはリーダーシップの醸成に悪影響をもたらすと考えられる。そこで私は、勤務先のWebサービス企業において「複雑で変化の激しい問題に対応するためのフレームワーク」2であり、管理よりもむしろリーダーシップを重視するスクラム3がそうした状況を打破し得るものと考え、スクラムを導入し普及に努めている。

研究の目的

本研究は、「チームメンバー個々のリーダーシップを醸成する」という課題に対して、スクラムの導入がいかに影響するか、それはどのような意味においてのリーダーシップであるのかについて解明する。

研究内容

リーダーシップの分類

本研究はまず、リーダーシップの内容を以下の3つの軸に分類する。

上記のうち1と2については、リーダーシップ論の蓄積が明かしてきた「頑強で不動の2軸」4である、課題関連と人間関連の2軸に基づくものである。

スクラムは、プロセスそのものを内省し改善していく契機を提供する。そのことにより、組織学習が促進され、開発プロセスやプラクティスがより効果的なものになるとされる2。第3の軸は、その意味における改善へのリーダーシップを扱う。

研究手法

調査票による定量的な調査を行う。調査の対象者は、スクラムチームを構成するプロダクトオーナー、スクラムマスター、開発チームの3つの役割を遂行する人々に加え、公式組織上のマネジャーである。

調査票の設計は上述の3軸に基づき、それぞれの軸においてリーダーシップを示すと考えられる、以下に例示する内容(2 4を参考に作成)について、スクラム導入以降に自発的行動として取ることができるようになったかどうかについて質問する。

その上で、それぞれの対象者にとってリーダーシップ行動にどのような変化が現れたのかを、回答に対する統計分析により明らかにする。

あわせて、各軸における行動の具体的内容についても明らかにするために、非構造化インタビューを行う。インタビューの内容は、調査票同様上述の3軸に沿ったものとする。

研究の成果

本研究は、昨今の激しい競争環境下において求められるリーダーシップについて、スクラムの導入がその醸成にどのような影響をもたらすのか、どの役割にとってのどういった種類のリーダーシップであるかを明らかにする。

このことは、業務プロセス改善に際して、導入を検討するプロセスの選定やその効果に対する見積もりの正確性に一定の根拠をもたらすとともに、スクラムの効果が明らかになればリーダーシップ醸成について効果的な打ち手を提供するため、競争優位の源泉となり得る。

参考文献

  1. 中原淳 (2010) 『職場学習論 仕事の学びを科学する』東京大学出版会

  2. Schwaber, K. & Sutherland, J (2013), The Scrum Guide The Definitive Guide to Scrum: The Rules of the Game (角征典訳 (2013) 「スクラムガイド スクラム完全ガイド: ゲームのルール」) 2 3

  3. Friis, D & Ostergaard, J & Sutherland, J (2011), Virtual Reality Meets Scrum How a Senior Team Moved from Management to Leadership Results

  4. 金井壽宏・高橋潔 (2004) 『組織行動の考え方 ひとを活かし組織力を高める9つのキーコンセプト』東洋経済 2